ハンス.ベルティング 『美術史の終焉?』

美術というとどうしても日本人一般にはおなじみの薄いものという印象は拭えないですね。

美術品や工芸品を趣味として集めている人もそんなに多くはない印象を受けますし、私自身、生活上でそういったものにお目にかかることが殆どないからですね。

大学の教養講義で『美術』というのがあり、履修はしませんでしたが、モグリで受けたことがありました。

そこでは、日本人はあまりに、仕事に時間を裂きすぎで美術に興味がなさすぎである。

週一回くらい美術館に足を運んで、絵画などを鑑賞してくるべきだ。」
という事を話されているのが記憶に残っています。

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然し、そういう内容は頭にはいっていたものの、それを実行することなく、今日に至りました(苦笑)

それは、やはり身近な趣味、それも簡単でしかもすぐに心底楽しめる趣味があったからこそであり、何かがいけなかったわけでもないでしょう。

それで悔いている事は一切ないですね。

それに、日本人が仕事ばかりに勤しんでいるという海外からの批判があることも承知していますが、それは本人が時間を忘れるほど打ち込めるものをその仕事に選んでいるからだというのが大半の理由でしょう。

心底仕事に打ち込めないで生活の殆どの時間を費やしている、というのならば本人は、それをやめるように動くでしょう、

そういう人が少数派である、ということでしょう。

こういった理由で、やはりそれほど美術の文化といったものがそんなに日本で蔓延化しないのだろうということは言えます。

梅棹忠夫氏『私の生きがい論』に書いてあった、「今、国民国家は戦争という国民を1つのベクトルに向かわせる時代ではなく、国民1人1人の心の赴くまま拡散していく時代になった」という言葉が思い起こされます。

そのとおりでしょう。

いろんな目的は、それぞれの人が意図するベクトルに向かう方を決めるのだ、ということですね。

そのために、いろんな目的が個人個人にあり、国民全体を戦争のように1つのベクトルに向かわせる時代ではないということですね。

このような社会を、無目標社会というような名称で語られていた時代が日本の70年代似合った気がします。

人は物事をどのような関心を持つかは、人それぞれです。

自然の壮大なる威力に関心を持つ人もいれば、宗教的なものに関心を持つ人もいれば色々いるのです。

私は人の心の動き、内容といったものに関心を持っていたので、どうしても人文や社会といったものに多く関心を持つようになったので、心理学社会学、政治学、経済学といったことについて書いてある本を読むようになりました。

それをこのブログで多く紹介してきました。

そういった科学は、人の社会を良くするものであるから、その科学的な知識を現代社会に投射して、論じる姿勢が科学に携わっている人には大事なことだろうと言うことは言えます。

ゆえにそういう姿勢でいる教授の講義は面白かったゆえに、集中力をもって臨めましたし、そういう姿勢がない教授の講義は集中力を維持するのが難しかったです。

本もどうようですね。

しかし、このような美術芸術といった分野に関する本は、そこに書いている内容があまりに生活から隔たっているとどうしても読む集中力が萎えてくるのは否めないです。

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しかし、それはケース.バイ.ケースで、どんな美術芸術に関する本がそうだといいきれないですし、そういう本でも一気に読めてしまう事があるのですから過度な一般化は避けるべきでしょうね。

一般的な日常生活から隔たっているけれども知的な遊戯だけという本もたくさんあります。

しかし、非常に面白くて一気に読んでしまうというたぐいの本は結構あります。

みすず書房にそういう本はたくさんあり、私は楽しませてもらいました。

しかし、そのような知的な遊戯をしているだけの大学の講義や本が何故多くの人が受講するのか、または売れるのかというのは、やはり多くの人がそれを、批判の多少は人それぞれでしょうけれども、受け入れているからでしょう。

ゆえにそういう事をして生計を立てていけるということでしょう。

そんなことで生計を…と批判したくなる人がいることや、その人の気持ちはよくわかります。

然し、経済の需要と供給の法則ゆえに、そういうものを受け入れられる素地があるからこそ、そのような結果になっているのだということはわからないといけないですね。

どんな知的遊戯の本が流行るかは、運もありましょうし、それが発行された時にどれだけの人がそれを求めたかにもよるでしょう。

価値観の一致が必要なのですね。

そういう知的遊戯をしているといっても、内容が問われねばならないのは言うまでもないことです。

私の法学部の時代には、毎回毎回同じようなことしか喋っていない教授がいました。

しかも指定された教科書は、他の本からの引用ばかりで、読むにつまらない本でした。

然し、学生の多くはそういう教授のほうが単位が取りやすいですから、受講する人が多かったし、講義に使われる教室は大きなものでした。

ゆえに、少数派の人がそんな批判をしても、その教授のスタンスは変わることはなかったのでしょう。

そのままで、授業料は多くもらえるし、教科書は売れるのですから。

そのようないいかげんな教授を締め出すために、私はその教授の授業を履修するのをやめるべきだったのですが、今はもう後の祭りでした(笑)。

そういった吟味を施して、妥当と思われることについてはそれを支持するために、その内容を称賛し人に伝える、またはこのような場でも紹介していく。

逆に、けしからんと思われうことについては批判していく、そんなスタンスが必要ではないでしょうか。


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ひとことに知的遊戯とはいいますが、このいいかげんな教授のような引用ばかりでは非常につまらないし、知的遊戯にならない事はお断りしておきましょう。

色んな本を読み、その他いろんな媒体から情報を得て、整理し、それを長い間かけて脳内で熟成させ、自分の頭で考えてオリジナリティあふれる理論を構築するという作業で書かれた本は非常におもしろいものです。

知的遊戯だけの本であろうと、生活に結びつく実学的な本であろうと。

この『美術史の終焉?』は、そういう過程を通して作られた本である、ということは言えるでしょう。

先の『私の生きがい論』にしろ、何にしろ本を読み合わせながら考えると、読書というのはおもしろくなっていくものです。

この本を読んでおもしろいと思ったのは、かつて哲学が辿った道と同じ道を、美術史も辿ったということですね。

雑学と濫読の総体=哲学であるという公式はあたっていると思いますが、ヘーゲルのいきた時代は、あらゆるものが考察の対象であったのですが、本を代表とする情報の増加によって、いろんな対象を切り取ってタコツボにこもってその範囲だけを考察の対象になっていったということですが、やはり美術においてもそのような変遷をたどっていったということですね。

美術家美術史家は別々の道を行くことになったのです。

それは現代の音楽ジャーナリズムでも同様ですね。

その他の分野でも。

音楽する人と、それを論じる人は別ですね。

それのみか、美術批評美術史という具合にまたも分化していったようです。

そして、それぞれの史家の関心の違いから更に分化していったということですね。

ここで興味深いと思ったのは、ヘーゲルがこの本ででてきたことですね。

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   ヘーゲル


ヘーゲルといえば社会思想ででてくる人ですが、このような美術史という分野ででてくるとは驚きでした。

そこで、ヘーゲルの芸術に関する言葉が出てきています。

確か、ヘーゲルと同じく、ウェーバーも社会思想ででてきますが、ウェーバーも音楽についての本を書いていますね。

あらゆるものを考察している人が、やはり結果的に名を遂げていますね。

今の分化は仕方ないですが、だからといってタコツボにハマってそこから出ようという意志のない人は、やはり自家撞着に陥りやすい事は間違いないですね。

美術家美術史家は、別個のものですが、互いに経験したことないものであるならば、互いにわかりあえることはないでしょうが、互いに互いの仕事内容を経験すれば少しはわかる事は明白ですが、その内容について経験しようという意志がないならばそれは無理でしょうが、時間的な成約もあることもまた明白でしょう。

ゆえにわかろうと努力しても、完全にわかりあえることはないのでしょう。

そのためにこのような本ができるのだと思います。

先に書いたように、その本に書かれている学問の内容が現代社会に投射しながら、現代人がわが事のように考えざるを得ないような投げかけがあれば、非常に興味深くなったことでしょうが、そういう趣旨でもないですし、美術自体そのような性質をもっていないかもしれないですから、そのような作業はなされていないです。

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美術史家の様々な研究の結果抽出した理論、美術史家の見解の比較、歴史など非常に多岐に、しかも奥深く論述しているので非常に緊張感を強いるものでしたね。

そのような知的な刺激を脳内でしたい人にはうってつけの本でしょう。

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