氣賀健三 『歴史に漂うロシア』

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国家が社会主義を採用し国家を運営すれば、その国家には、働けば必ず賃金がもらえて、皆が平等で搾取のない楽園が形成されるという夢を信じて、第二次世界大戦後いくつかの国でその壮大な試みがなされました。

その急先鋒の国の1つがロシアであったことは間違いありません。

戦後、スターリンは集団農場制度に国を移行させました。

そしてMTS(機械、技術供給所)を設置して、そこからコルホーズに農業機械を貸し付けて、賃料として収穫物をコルホーズから徴収し、割り当てられた供出課題を政府にださせました。


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政府の目論見は、コルホーズから徴収した農産物を高く売ることによって利潤を蓄積して、そこから重工業化へ移行することを目指していましたが、国民の生活費は足りなかったようです。


フルシチョフが書記長になった時は、MTSを解体して、農業機械をコルホーズを買い取らせ、それを自主的に使用させ、調達価格を引き上げたようですが、それほど生活の改善にはつながらなかったようです。

農民が自分の生活のために働けるのは付属地だけで、共同農地での労働をさぼるのは当然です。

ロシアなどの社会主義国家は、どこも共産党の一党独裁が当たり前です。


共産党支配と行政官僚の既得権益が温存された状態では、真に農民やその他国民の利益を最重視した政策が採られるのは非常に難しいことであるようです。


そこで、やはり当然のなりゆきとして自主的な判断の尊重と責任の重視、自利心、競争を促す政策がとられたのです。


それはゴルバチョフが書記長の時に、命令経済が改められました。

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ゴルバチョフ

国民の自立による経済活動の範囲や種類を拡大する方向へ舵取りをしたのです。



しかし、混乱、不正、腐敗、闇市場が拡大されたようです。

ゴルバチョフは、価格統制をせず、しかも課税規制もしなかったようです。

すると、闇で原料を仕入れたり、公定価格で仕入れたものを加工して高く売ったりする闇成金やマフィアの発生を促す結果になったのです。


それに、官特権につながる者の大儲けにもなりました。


しかし、物資不足の状況下では国家権力に頼るのが無難だったために、企業間の競争や効率の向上の期待は薄だったようです。

さらに、コルホーズやソフホーズで働く農民に自主自立の農業経営を認める方針も認可しました。

ソ連国民の20%が農業に従事していたようです(かたやアメリカは全国民の3%が農業に従事していたようです)。

それが、ブレジネフの時代には27%にも拡大されたようです。

しかし、肥料や農機具その他の資材調達の自由市場がなかったようです。

需給の均衡を期待するには、多種多様の企業の競争が必要ですがそれには、独占体質の国営企業の分散と流通企業の存在が不可欠です。


そして、ロシアの通貨であるルーブルが国際的な強い通貨になるためには、その価値の安定が必要です。

しかし、財政赤字の増加(企業への補助金、農業への価格補助、非生産的な投資、軍事費節約の不徹底などが原因)、貿易における輸出の低減、対外債務の増大でそれもそれほど上手くいかなかったようです。


ロシアにとって外貨獲得の原資となるのは、石油などのエネルギー生産が主ですが、資材不足、労働事情不穏などが原因となってそれもうまく事が運ばないようです。


この事態を打開するには、補助金や価格差補助金を減らす必要があり、また生産財重視、軍需品優先の資源配分、農業の低生産性を見直す必要があるのはいうまでもありません。


ロシア国民は、消費需要に対する不十分な供給力に不満をもって生活しているのです。

エリツィンは、 「企業民営化」を打ち出しました。

しかし、民営化されたのは、商業やサービス部門の小規模なものだけでした。

企業の大部分は国有国営のままでした。

保守派に進行を阻まれたのでした。


やはり社会主義国は既得権益が健全なる経済発展の邪魔をするのです。


そして、数を多く作ることを奨励したのですが、それによって品質が悪く、生産費が高くつき、原料の浪費が目立つようなり、それだけでなく、その数量のみに特化した生産材では国際競争力がつくはずもなく、貿易では赤字、という社会主義国の生来からの悪弊を招いたようです。

そこで思い起こされるのは中国の朱鎔基です。

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朱鎔基

ロシアと同じ社会主義国家である中国において、それまでの社会主義による官僚主義により汚職や腐敗がはびこり、経済成長を圧迫していたのは、誰でもわかる事態でした。

そういった人たちのリストラは不可欠であるのは誰にでもわかりますが、それを断行するのは至難のわざでありましたが、朱鎔基は1200人中300人のリストラを断行しました。


「部」や「委員会」も40から29にまで減らしました。


のみならず、浦東開発計画を成功させ、中国版の不良債権である三角債問題も解決、97年にアジアをおそった金融危機の際に朱鎔基は「中国は断じて元の切り下げはしない!」と毅然とした態度を示し、その結果インフレは鎮静化し経済発展の軟着陸に成功したのです。


このような画期的な成功劇をロシアにも期待したかったのはいうまでもありません。

IMFや世界銀行が、ロシアに金を援助すれど、国内にはマフィアや悪徳官僚がはびこり、外国からの援助は1回だけの資源の購入に使われるが、その資源が活用されずに闇に流れていくのです。

モスクワの街には外国製品がたくさん並んでいます。

マフィアは、外国産車に乗っています。


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その金は、西側の金で生産の恢復に使われずじまいなのです。

現在、ロシアにしろ中国にしろ社会主義国を標榜していますが、計画経済ではなく市場経済に移行しました。

そして今や、先進国8の内にロシアは入り、中国も今や世界第2位の地位を手に入れました。


その詳しい内情や経緯については別のページで紹介していきたいと思いますが、この本や他の社会主義について書いた本でわかることは、社会主義の試みはユートピアにすぎない、ということです。

人民には、決まった時間内で労働すれば、後は決まった賃金を受け取ることができるという社会主義の体制では競争が生まれず、粗悪な品が生産されるだけに終わってしまいます。

そんな粗悪な品ばかりでは、人民の需要を喚起することはできず、そのせいで、ロシアや中国の生産率は軒並みダウンし続け、経済的な低迷から抜け出すことが出来ることもなかったのです。

その状態を打開しようにも、既得権益に固守する行政の勢力が改革に反対し、なかなか改革を断行することはできなかったのです。


そんな経済的な右傾化を横目に、西洋資本主義国は、企業間の競争を促すことによって、より良い品をより安くする技術革新を怠らなかったがために、経済的な成長を続けることが出来たのです。

その最先端の国を1つが日本であったのはいうまでもありません。

そんな資本主義国の状態を国民の目に晒させないように、また社会主義国内の惨状を認識させないように、ロシアをはじめ社会主義国では、鉄のカーテンで国外の報道を禁止し、報道機関をすべて党の独占にし、国民の国外旅行を禁止しました。


しかしそんな小手先の法令がいつまでも功を奏するはずもなく、ついに91年にソ連ではクーデターが勃発し、それをきっかけに社会主義国は解体を余儀なくされたのです。


いまや社会主義国を標榜する国は世界で4つしかありませんが、いずれも計画経済ではなく、市場経済を採用しているのです。

計画経済ではうまくいかない、という歴史的な教訓が得れたのです。

マフィアや闇市場を形成するのは人です。

確かに日本を含む資本主義国にも、そういった普通のモラルに反する集団は多くあります。

携帯電話に、登録していないのにいきなり来る金儲け系のメールや出会い系のメールを運営しているのは、そういったアンモラルな裏社会の人間たちなのです。

こういった集団に金を渡らせないように、決して電話したり金を振り込んだりしてはいけません!

しかし、そういったマフィアや闇組織は、日本では諸外国に比べて非常に少ないのです。

その理由は、いろいろありますが、その1番の大きな理由として、教育が徹底されているということが言えると思います。

しかし、そのためには学ぶための自然環境が適度である必要があります。


勉強するのにあまりに暑かったり、あまりに寒かったりする環境では教育を施すのが難しいのです。

先進国のどれもが、温暖湿潤気候であるのもそのことがわかるでしょう。

ロシアは非常に寒冷な気候なので、その機会を奪われてしまうのです。


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そして、教育には本が必要です。

その本をゆき届けるためには、流通網が整備されていなくてはいけません。

ロシアは、寒冷な風土ゆえに雪に道が閉ざされることもあるのみならず、山や谷がたくさんあり、流通が困難なのです。

それでは、本のみならず一般的な物資の流通も妨げられてしまいます。


これでは、モラルある人間を作る教育がスムーズには行きません。

教育が上手くなされなかった人間の模範は誰になるでしょうか?

いうまでもなく、自分の近くにいる人間である親たちや隣人たちです。

それが良識ある人間ならば問題はありませんが、その模範がマフィアや闇組織の人間だったらどうなるでしょう?

そのようなアンモラルな人間を拡大再生産されてしまうのです。

今や世界2位の経済的な地位を手に入れた中国ですが、そんな経済的な栄華の裏には、裏社会がはびこっているのです。


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これまで、『黒社会』『蛇頭』『中国現代化の落とし穴』といった中国の闇組織のルポやドキュメンタリーについて書かれた本を読んできましたが、それらの本を読んで思ったのは、「よくここまで人を騙して、法まで犯して悪いことを平然とできるなあ!」ということです。

その闇組織の人々は、家が貧しかったがために学校にもほとんど行けず、幼少期は家で仕事をしていた人たちがほとんどであるといって間違いありません。

こういった悪事を働くことが、その組織内では「文化」になってしまうのです。

その「文化」というものは非常に強固なもので、違うものに一変させるには非常に長い年月がかかるのです。

教育を施すにも多大な時間と労力がいるのです。

日本人が考えている普通のモラルある生活がいいですよ、といってもそんな異文化的なことを理解させるにも異常な時間がかかるのです。

ましてや人を欺いて大金を得る方法に味をしめてしまった人たちを更生させるのは不可能かもしれません。

これはロシアの闇組織の人々も同様でしょう。

経済の発展には、気候条件が重要なのです。

ロシアは、非常に寒冷な気候で、年ごとの変動が大きいのです。


それゆえに、作物が順調に育つ年もあれば、育たない年もあるのです。

それが原因となり、経済的発展に不安定性があるのです。

そこを鑑みると、日本はそういった不安定性がほとんどなくて、恵まれているなあと感じざるを得ません。

しかし、社会主義国の内情をみれば、社会主義を国家が採用すれば、そこからさらに発展して共産主義に状態になり、地上に楽園が実現する、というのはユートピアでしかなかったようです。


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確かに、第二次大戦後の荒廃した国からの状態から経済発展を目指して国を運行していけば、跳ね上がるように経済率が上がるのは必然ですから、1960年代から70年代にかけて世界の経済力では、1位アメリカ、2位ソ連、3位日本、というような時代があったことは確かです。

テストで20点とか30点とか取れなかった人が頑張って70点取れるようになるのが簡単なのと同様です。

そんな状態を見ていただけで、「社会主義は真実である」とか「我が国も社会主義に移行しなくては!」などといったことを言っていた学者は洋の東西を問わず多くいたことも確かです。

当時の岩波や合同出版、未来社といった出版社からそういう論調でものを書いていた学者の本が多く出ているのは、興味深いです。

ですが、実際に楽園など出現しなかったのです。

しかし、そのユートピアを信じていた学者は多くいました。

以下の本からの引用を読むと笑ってしまう人は多くいるでしょう。

「今日、社会主義を採用していない国々において、資本主義的生産関係は時代遅れのものとなり、科学技術の進歩の妨げとなっている。」(ケヴィンウォディントン著/『現代の哲学入門』合同出版 147ページ)

こういった学者の特徴は、非常に教条主義であるのがほとんどというか全てです。


「マルクスがいったから」とか「マルクスの思想は洋の東西を問わず広くひろまったから」という理由だけで、無批判でいるのです。

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マルクス

そして、マルクスはドイツ人ですから、その難しいドイツ語から翻訳されたマルクスの著書をそのまま引用して、それがあたかも自分で言ったように書き換えているだけで、資本主義との内実の詳しい比較がないし、現地に行ってその現状を見ようという気概もないのです。

全然学問に対して熱心ではないのです。

これではまるで宗教ですね。

教祖や教団の上部の人たちが言ったことに関しては全く無批判でいて、そのいわれたことだけを行動に移しているのです。

まるでロボットのような感じです(笑)

話題になった学者が権威的な威光を放っていても、無批判でいていいということないということはわかると思います。

偉大なるマルクスの言ったことも結局現実離れした理論であったことが証明されたのですから。

共産主義の理論はユートピアでしかなかった…ですが資本主義国も課題はあるのです。

環境問題、格差社会、中央と地方の格差、減ることのない国債、犯罪率の増加、コミュニティの崩壊、職による労働事情不穏など目を広げていけば、日本国内だけでも問題は山積みです。

その問題に、目をそらすことなく向き合って、良き方向へもっていくように行動していきたいと思います。

そんなことをこの本を読んで感じました。

この本は以下!
  ↓


歴史に漂うロシア

その他、おススメ本
  ↓
アジア覇権の行方―日本を脅かす中国その実力と正体

蛇頭(スネークヘッド)―中国人密航者を追う

黒社会 中国を揺るがす組織犯罪

中国現代化の落とし穴―噴火口上の中国






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