佐伯啓思 『正義の偽装』

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毎回のことですが、佐伯啓思氏は奥の深い、造詣の深い社会科学者だと感嘆します。揺れるハート

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佐伯啓思

日本は高度成長を終え、近年の10年では年1%しか成長できていない。

がしかし、これは着実に豊かになっているのです。

成長しか頭にない経済学者は、「年率3%が必要である」という暗黙の了解みたいなものがありますが、高度な成長を終えればどんな国であってもこのように鈍化するのは当然です。

また中国や韓国にも成長率を追い抜かれることにひたすら危惧している日本の識者にも、そのような事態になるのも佐伯氏は当然であるとしています。

また、うまくいかないことがあると、その犯人を捜してその対象をバッシングしているという姿勢にも批判しているのです。

社会がどれか1つの対象によってうまくいかないことの原因になるはずあり得ません。

必然的に起こることに対し危惧感を抱いている日本のジャーナリズムに対し、敢然と批判しているその姿勢には肯定感を私は抱きます。

また、ジャーナリズムに対してだけでなく、一般の国民に対しても、佐伯氏は頂門を投げつけているのです。


雑誌などに「決断できない日本」と書かれているのをみて、あなたはどう感じますでしょうか?

普通は、自分より上位にいる人間に対してその責任を向けてあとは知らない!というニュアンスを感じるのではないでしょうか?

しかしそうではないのです。

市民として行動すべきことを探し、知識、情報を調べ良き方向へ社会をもっていく努力をしなくてはいけないのではないでしょうか?

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戦後は、「自由」「民主」「経済成長」「平和主義」が公然と掲げられてきましたが、これらは一皮むけば国民の自己中心的なイデオロギーになると佐伯氏は言うのです。

民主主義が発展すれば人々が一層の決断と責任の意識を高め、近代的な市民になるというわけではないとも言います。

こんにちの停滞を招いた張本人は政治家なのでしょうか?

それとも官僚でしょうか?

民主主義は民意の実現なのでしょうか?

政治というのは、古来からエリートがおこなうものです。

日々、仕事に追われているだけで精一杯の普通の国民には一側面はわかっても全体はわからないものです。

そこで理想的な考えが共和主義であるのです。

共和主義は、あくまでも優先すべきは公共的なことがらであり、そこに私的な利害を持ち込んではならないという考えが第一にあるのです。

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しかし、そんな潔癖な人間はいません。

いてもかなりの少数派であることに間違いはありません。

それは無理ですから、権力の分散をはかり、市民資格を付与してない者には政治に参加させない、ということを人間は考えました。

公共的なビジョンとはどういうものかを考えてみますと、社会全体を俯瞰して見渡して、どのような政策が望ましいかを考えることであると私は思います。

人と人の利害を調整する必要性があるのです。

しかし、互いに自分の意見を言い合っていては、エゴとエゴのぶつかり合いにしかなりません。

双方の意見を聞き、双方の気持ちがわかるようでなくては体験しなくてはわかりようがありません。

所得の多い人とそうでない人の意見を調整して政策を組んでいく必要のある場合には、貧乏人から這い上がって金持ちになる、そして金持ちから貧乏人に成り下がる、こういう経験を積んでいく必要があるのではないでしょうか。


貧乏人と金持ちの利害が戦後の日本は一致していたのです。

だから、当時の日本は世界でもまれにみる平等社会でしたが、今やその利害が一致しないため、金持ちに生まれたがために相手の立場をわかろうと思ってもわからず、金持ちに優利な政策が次々に行われている。

その利害を一致させることができる、双方の立場を体感できた人に政職に就くことが求められるのではないでしょうか?

民主主義は、エゴとエゴのぶつかり合いになる必然性を内包しているのですが、その利害を按配よく調整するためには、やはり情報、知識、そして経験が必要であると思います。

そのためにいろんな本や雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットなどいろんな媒体があります。

市民には大学、という場も公開されています。

こういうものにアクセスして、どんな社会を作るのが望ましいか?そしてそのためには何をすればいいか?を考えて行動する必要性をこの本を読んで感じました。

しかし、そういったことをしても1銭にもならないことは間違いありません。

であるからして、政治的無関心層も多く出てきてしまうのも民主主義の難しさでもありますが、そこにだけ意識をフォーカスして嘆いていては敗北主義でしかありません。

良き市民が出てきてくれることを私は期待しているのです。

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